DIYで棚などを作るとき、図のように木材を突き当ててビスで固定する方法が一般的だと思います。
この方法は簡単ですが繰り返し分解、組み立てをするとなると分解は簡単でも組み立てが難しくなります。
一見簡単そうに思えますが、板を突き当てた状態でないとビス止めできないため、元のビス穴にピッタリと合わせることが難しくなります。また繰り返しているうちに固定強度も弱まります。
そういう時に便利なのが鬼目ナットです。繰り返し分解、組み立てできるほか、ビス止めより見た目がきれいになります。
鬼目ナットの種類(一部のみ)
鬼目ナットにもいろいろな種類があります。
金槌で打ち込んで木材に入れる、打ち込みタイプ、六角レンチで回しながら木材に埋め込む、ねじ込みタイプなどがあり、それぞれにツバ付き、ツバ無しがあり多くの種類があります。
その一部が以下のようなものです。
Aタイプは打ち込みタイプ、D、Eタイプはねじ込みタイプになります。
ツバ付きとツバ無しの違いは上の部分にツバが有るか無いかになります。
ツバ無しタイプは、鬼目ナットを木材の表面より少し深く埋め込んで木材の密着性を高めたい場合などに使用し、ツバ付きタイプは、鬼目ナットを埋め込むときこのツバがストッパーの役目になり埋め込み過ぎを防ぎたい場合や、荷重を受けるところなどに使用します。(個人的な解釈ですが・・・)。
実際に埋め込んだのが次の写真です。
最初の一般的な棚の作り方を鬼目ナットを使うと次の図のようになります。
棚づくりを例に具体的な使用方法を説明します(自分がいつもやっている方法です、一例と思ってください)。
鬼目ナットの使用方法
まず、側板のねじを通す位置に貫通穴をあけます。穴のサイズはねじ部の直径のサイズになります。M6のねじなら6mmの穴をあけます(ここで使うドリルビットは全て木工用です、鉄工用とは異なりますのでご注意ください)。
少し余裕を持たせたい場合は1mm大き目の穴をあけるといいと思います。少し大きくすることで組み立ての時ねじと鬼目ナットの位置が合いやすくなります。ただし大きすぎると棚の位置がずれてくるので注意が必要です。
また、最後の方で説明しますが、木口に穴をあけるとき慎重に狙ったつもりでも穴の位置がずれることがあります。その場合の修正の事も考えておく必要があります。
ここで重要なのが穴をあけるとき側板の外側からでなく、内側から穴をあけるということです。
ボール盤で穴あけするなら問題ありませんが、手でドリルを持って穴あけする場合、外側からだと間違いなく穴の位置がずれます。
また、材料を用意した時、最初にどの板をどこに使うのかをあらかじめ決めます。そして鉛筆などで文字や印をつけておきます。マスキングテープを貼って、それに書いてもいいと思います。どの板をどこに使うかだけでなく、どの面を上にして、どの面を正面にするのかも決めます。
自分がいつもやっている方法は、文字を書いている面が正面で、文字が正しく読める方向が板の上下の向きという風にしています。これだとどこに使う板なのかを書くだけですべての方向が分かります。
この位置決めをしておかないと、後で組み立てるとき穴の位置が合わない事態が発生する可能性があります。
側板にすべての穴をあけたら、棚板に穴(鬼目ナットを埋め込むための穴)をあけます。穴のサイズは鬼目ナットのパッケージの裏などに参考下穴径が記載されていますので、それを参考に決めます。
サイズ | 使用ねじ径 | 参考下穴径 | レンチサイズ |
---|---|---|---|
5×13 | M5 | 7.7~8.0 | 5 |
6×13 | M6 | 8.7~9.0 | 6 |
今回使用する鬼目ナットのパッケージ裏の表を転記しています
棚板に穴をあけるとき重要なのが、現物に合わせて穴をあけるということです。
2×4材を使って具体的な方法を説明します。
使用する鬼目ナットはDタイプ(ツバ付き)、サイズはM6×13です。
側板の穴の位置の中心線と棚板の側面の中心線を合わせます(側板にはすでに2個の貫通穴があけてあります)。
側板の外側からドリルビット(側板の穴あけに使ったもの)を通し、ドリルビットの先端で棚板に印をつけます(ドリルビットを手で回しながら印をつける)。
この印が棚板側の穴の中心になります。本来の中心からずれているかも知れませんが、現物合わせを優先します。
印をつけたら鬼目ナット入れる穴をあけます。上の表で参考下穴径が8.7~9.0mmとなっていますので、9mmのドリルビットを使用します。
側板と違い貫通穴ではないので、途中で穴を止める必要があります。穴の深さは鬼目ナットの長さ(埋め込まれている寸法)と固定に使用するねじの長さをもとに決めます。
また、ねじの長さは部材の厚さと鬼目ナットの長さをもとに決めます。
これらをまとめると以下の様になります。
ドリルビットにビニールテープを巻いておけば穴あけの深さの目安になります(正確ではありませんが・・・)。
次に鬼目ナットを埋め込みます。この鬼目ナットは六角レンチで埋め込むようになっています。レンチサイズはパッケージの裏に記載されています(上の表参照→6mmのレンチになります)。
鬼目ナットを棚板にあけた穴に乗せ、水平を確認しながらゆっくりと六角レンチを回し埋め込んでいきます。
組み立てて出来栄えを確認してみます。
この程度の傾きなら側板の穴を丸ヤスリで削り、広げてやれば修正できます(広げる方向を間違えないように)。
正面側と後ろ側の2つの穴を修正した結果が以下の通りです。
実際に棚を作る場合、この修正作業を棚板1枚ごとに行います。結構大変ですね・・・。
木口に穴をあけるときの注意点
木口に穴をあけるとき思いのほか穴の位置がずれるときがあります。一概には言えないかも知れませんが、どうも木目(年輪)が影響しているようです。
年輪には色の濃い所部分と薄い部分があり、濃い部分の方が硬く、薄い部分が軟らかくなっています。その関係で年輪の幅が広い部分にドリルで穴をあけるとき、ドリルビットが軟らかいほうに流されてしまうようです(ドリルビットの径にもよるので何とも言えませんが・・・)。
これを避けるには、なるべく年輪の詰まった材料を選ぶと良いかも知れません。
試しに確認してみた結果が以下の通りです。
年輪の幅が広いものと、狭いものにそれぞれ穴の中心点を印し、ドリルで穴をあけ、ずれ具合を比較しました。
年輪の広い所がある部材の結果が次の通りです
年輪の狭い所がある部材の結果が次の通りです。
側板の穴の皿取り
すべての鬼目ナットを埋め込んだら、最後に面取りカッターで皿小ねじの頭が埋まるよう皿取り加工します。どの位置まで加工するかは、側板の穴に皿小ねじを通し、皿小ねじの頭に沿って鉛筆で丸を描いて決めます。
面取りカッターをドリルに取り付け、皿取り加工します。このとき低速で行った方がやり易いです(ドリルのレバーを軽く引くとできると思います)。
皿小ねじで固定した状態が次の通りです。
作品例
最後に鬼目ナットを使った作品例を紹介します。
同じ板材(厚さ25㎜ 幅200㎜㎜ 長さ900㎜)7枚を、そのままのサイズで組み合わせて作った本棚です。
おわりに
鬼目ナットを使うことで、分解組み立てが容易になります。
引っ越しや模様替えなどで移動したい時などに便利です。
作品の仕上がりもきれいに見えると思います。なんとなくDIYのレベルがあっがた気分になれると思います。
また、必要なくなり廃棄するときも分解でき、ねじ込みタイプの鬼目ナットなら六角レンチで取り外して再利用することもできます。
ただ、穴をあけるとき、どうしてもわずかに位置がずれるのは仕方ありません。紹介したようにある程度なら修正できます。最初は難しいかも知れませんが、何度か経験すれば慣れてくると思います。
ここに挙げた棚づくり以外にも使える用途があると思いますので、工夫してみてください。