AMDのCPUは現在(2024年5月)ソケットAM5が主流(2022年9月ごろから発売)ですが、自分のようなソケットAM4ユーザーの中には、まだAM5に移行するのは予算的に厳しいという方も多いのではないでしょうか。
AM5に移行した場合、基本的には”CPU、マザーボード、メモリー(DDR4→DDR5)”を同時に交換する必要があり、そこそこの出費になってしまいます。
そこでCPUだけでも交換してシステムをアップグレード(ゲーミング性能を上昇)したい場合”Ryzen 7 5800X3D”が有力な候補のひとつになると思います。幸いなことに発売当初よりは価格が下落しており何とか手が届きそうです(購入は2023年12月)。ただ、グラフィックカードが ”RTX3060 Ti” なのでシステムのバランス的にはどうなのかな?といった感じです 。
GPUボトルネックになる可能性がありますが実際どうなのか見ていきたいと思います。そうなった場合更にハイスペックなグラフィックカードに交換することでボトルネックは解消できますが、価格的には高額になるので自分には必要ないと思いますが、検証してみたいという思いはあります。
現在使用中の”Ryzen 5 5600X”から”Ryzen 7 5800X3D”に変更しゲームにおけるフレームレート測定をしてみましたので、同様のスペックでアップグレードを考えておられる方の参考にしていただけたら幸いです。
なお、CPU交換の際にCPUが外れないというちょっとしたトラブルがありました。その内容はこの記事の最後に載せています。
ベンチマーク測定に使用したPCのスペックは以下の通りです。
- CPU:AMD Ryzen 5 5600X および Ryzen 7 5800X3D
- CPUクーラー:Cooler Master Hyper 212 Spectrum V3(空冷式)
- マザーボード:ASUS ROG STRIX B550-F GAMING
- メモリー:DDR4-3200 288pin DIMM 8GBx2枚組 CL22
- グラフィックカード:ASUS Dual GeForce RTX3060 Ti V2 OC Edition VRAM 8GB
- 電源:SUPER FLOWER LEADEX V GOLD 650W
- モニター:MSI G251F (Full HD)
- OS:Windows 11 Home バージョン 23H2
- NVIDIA Game Ready ドライバー :バージョン 552.22
ベンチマーク測定を行ったPCゲーム等は以下の通りです。
- FINAL FANTASY XIV online:黄金の遺産
- IMMORTALS FENYX RISING
- TOM CLANCY’S THE DIVISION 2
- ASSASSIN’S CREED MIRAGE
- HORIZON ZERO DAWN
- BATTLEFIELD 2042
- 3DMARK Demo(Time Spyのみ)バージョン:2.28.8217
グラフィックカードが”RTX3060 Ti”のためNVIDIA DLSS(DLSS 2)に対応しているタイトルはDLSSオン(DLSSの設定はバランス)、オフで測定しています。
*DLSS(ディープ・ラーニング・スーパー・サンプリング)の設定には”パフォーマンス”、”バランス”、”クオリティ優先”などの選択肢があり、ゲームにより異なります。
フレームレート測定はゲーム内のベンチマーク機能を使用していますが、”FINAL FANTASY XIV 黄金の遺産”はベンチマークソフト単体を使用し、”BATTLEFIELD 2042”はCapFremeX(バージョン:1.7.2)を使用して測定しています。
また、当然ですがグラフィック設定内のフレームレートを制限する項目(FPSリミット、Vsyncなど)はすべてオフにしています。
測定は各ゲームタイトルの各設定で2回行い平均値を結果としています。平均値に小数点以下の数値がある場合は小数点以下の数値を切り捨てています。また、結果に小数点以下の数値が表示される場合も同様です。例:1回目 120.3fps、2回目 125.6fpsの場合→(120+125)/2=122fps となります。
モニター解像度がFull HD(1920×1080)のため、この解像度での結果になります。
各ゲームタイトルの結果は以下です。
FINAL FANTASY XIV 黄金の遺産
グラフィックプリセットは”標準品質、高品質、最高品質”の選択肢があり、すべての設定で測定しています。
また、グラフィック設定内の”グラフィックスアップスケールタイプ”の項目を AMD FSR か NVIDIA DLSS のどちらかを選択する必要があるため各設定で測定しています。
平均フレームレートは結果の画面には表示されませんが、ベンチマークタイトル画面で”レポート出力”ボタンを押せば結果のテキストファイルを保存することが出来、これに平均フレームレートが記載されています。
スコアの結果は以下の通りです。スコアの評価は8段階あり、最上位が15000以上(非常に快適)となっています。結果画面の左下に表示されています。
FSR、DLSSのどちらにおいてもグラフィックプリセットが標準品質ではRyzen 7 5800X3Dの方が差をつけていますが、グラフィック品質が上がるほどその差は縮まっているようです。
IMMORTALS FENYX RISING
グラフィックプリセットは”最低、低、中、高、最高、超高”の選択肢があり(カスタムを除く、他のゲームも同様)、”中”以上の設定で測定しています。
Ryzen 5 5600XとRyzen 7 5800X3Dとの差はほぼ無しといっていい結果となりました。
TOM CLANCY’S THE DIVISION 2
グラフィックプリセットは”低、中、高、ウルトラ”の選択肢があり、”中”以上の設定で測定しています。
なお、垂直同期をオフにするとプリセットの表示が”カスタム”になります。
グラフィックプリセット”中”と”高”ではRyzen 7 5800X3Dが30fpsほど差をつけていますが、”ウルトラ”ではほぼ並んでいるという結果になりました。
ASSASSIN’S CREED MIRAGE
グラフィックプリセットは”低、中、高、高+、最高”の選択肢があり、”中”以上の設定で測定しています。
なお、DLSS オフの設定は無く、設定のアップサンプルタイプの中からいずれかを選択するようになっています。選択肢は”TAA(テンポラル アンチエイリアシング)、NVIDIA DLSS、Intel XESS(Xe スーパー・サンプリング)、AMD FSR2(FidelityFX Super Resolution 2)”となっています。デフォルトが”TAA”なのでTAAとDLSSで測定しています。
DLSSの設定を”バランス”にするためには”適応品質”の項目をオフにしなければなりませんが、オフにするとグラフィックプリセットの表示が”カスタム”になります。
”中”と”高”ではほとんど違いがみられません。”高+”と”最高”でややRyzen 7 5800X3Dがリードしているようです。
BATTLEFIELD 2042
ベンチマーク機能が無いため実際にゲームをプレイして”CapFrameX”で測定します。
手順は次の通りです。
”CapFrameX”を起動→Capture timeを90秒に設定→ゲームを起動→ゲームモード”ブレイクスルー ソロ/協力プレイ”を選択→マップ”フラッシュポイント”を選択→プレイ→輸送機から降りた瞬間にCapture開始(F11キーを押す)→実際にプレイ→90秒経過したら”キャプキャー フィニッシュ”の音声が流れるのでプレイを終了
グラフィックプリセット(グラフィックのクオリティー)は”自動、低、ノーマル、高、最高”の選択肢があり、”ノーマル”以上で測定しています。
DLSSオフではRyzen 5 5600XとRyzen 7 5800X3Dは横並び、DLSSオン(バランス)ではノーマルでRyzen 7 5800X3Dが少し差をつけているものの”高”と”最高”では差をつけているとは言えない程度の違いです。
実際にプレイしながら測定しているため、全く同じプレイ内容にならないことを考えると同程度と言えるのかも知れません。
3DMARK Demo
3DMARK Demo(バージョン:2.28.8217)で測定できるベンチマーク機能は以下の3つです。
- Time Spy:DirectX 12ベンチマーク
- Fire Strike:DirectX 11ベンチマーク
- Night Raid:統合グラフィックプロセッサを搭載するPC向けDirectX 12テスト
今回行ったのは一番上の”Time Spy”です。結果は以下の通りです。
結果の通りグラフィックスコアは同じ、CPUスコアは Ryzen7 5800X3D が1.4倍ということになりました。
なお、2024年5月21日 3DMARKのアップデートがありました。3DMARK Demoも同様です。上記はアップデート前の3DMARK Demoです。
まとめ
これらすべての結果から判断すると、やはりGPUのパフォーマンス不足のため Ryzen 7 5800X3D の本来の性能を発揮できていないようです。
ほとんどのゲームタイトルでRyzen 5 5600X と Ryzen 7 5800X3D の平均fpsがほぼ横並びとなており、FINAL FANTASY XIV 黄金の遺産とTOM CLANCY’S THE DIVISION 2で最高の画質より低い画質に落とすと Ryzen 7 5800X3Dの平均fpsが伸びているのは、画質を落とすことによりGPUにいくらかの余裕が出来たためだと思われます。
逆に言うと Ryzen 5 5600X と RTX3060 Ti はバランス的に良好といていいのかも知れません。
ゲームタイトルによってはベンチマーク実行時に”GPU使用率”、”CPU使用率”が表示されますが、このとき”GPU使用率”が100%近くの場合はGPUがボトルネックになっているため、CPUを交換してもおそらくフレームレートは変わらないと思います。
ボトルネックと聞くと悪いイメージを想像しますが、パフォーマンスがピークに達しているということです。
今回の検証で気づいた自分なりの結論は以下の様になります。
GPU使用率がほぼ100%の場合→CPUをアップグレードしてもフレームレートはほぼ変わらない(この場合グラフィックカードのアップグレードをすべきである)。
GPU使用率が100%より低い場合(GPUに余裕がある場合)→CPUのアップグレードによりフレームレートの上昇が期待できる(どのくらい上昇するかはGPU使用率とCPUの性能による)。
*ただし、GPU使用率はベンチマーク実行時と同じく”フレームレート制限”をしていない場合のパーセンテージ
結果は以上です。
今回のトラブル
CPUが外れない!?
CPUを交換するには、まずCPUクーラーを外さなければなりませんが、いつものように3Dゲームを20~30分プレイしCPUを温めたあと行ったら無事に外れ、ここまでは問題ありませんでしたが、CPUを固定しているレバーを持ち上げてもレバーが垂直にならず、CPUを持ち上げようとしても持ち上げられませんでした。
CPU交換は何度も経験していますがこのようなことは初めてで”こんなだったっけ?”と疑問に思いましたが、たぶんロックが外れていないなと思い、冷静に何度かレバーを”倒す→起こす”を繰り返したところ”パキッ”と音がしレバーが垂直になり無事CPUを取り出すことが出来ました。
ロックが正常に外れた場合CPUをのせているソケット上部が矢印の方向に動くようになっているので、レバーを起こしてもCPUが外れない場合はそのことを確認してみて下さい。
おわりに
今回のCPUアップグレードでGPU、CPUのボトルネックの関係について、今までわかっているようでわかっていなかったことに気付きました。
もしわかっていれば”Ryzen 7 5800X3D”は購入しなかったと思います。
また、目的のゲーム性能向上(フレームレート向上)にはなりませんでしたが、GPU使用率100%がどういうことなのかもよく理解することができ、今後のアップグレードに役立ちそうです。
ゲーム性能は変わらなくてもCPU性能としてはアップグレードできているので全くの無駄にはならなかったと思います。
RTX5000シリーズが登場したらグラフィックカードをアップグレードするか検討したいと思います。もうしばらくSocket AM4のままでいこうと思います。