ドライブレコーダーのmicroSDカード内のファイル断片化はどのように進行するのか調査してみた

ドライブレコーダーの記録媒体にはmicroSDカードが使われていますが、ドライブレコーダーで使用する場合一般的な使い方に較べて書き換えが頻繁に行われるため ”定期的なフォーマット” が必要なことはご存じの通りです。

なかにはフォーマットフリー(フォーマット不要あるいは頻繁にフォーマットしなくてよい)のドライブレコーダーもありますが、今のところフォーマットが必要な場合が一般的だと思います。

この”フォーマット”のタイミングをWebで調べてみると、フォーマットは1、2週間~1か月といった具合に結構幅があり悩んでしまいます。

そうなるのも仕方がないかも知れません、なぜなら人それぞドライブレコーダーの使用条件など様々だからです。

例えば次のような条件が挙げらると思います。

使用しているmicroSDカードの容量

録画の画質(解像度、フレームレート)

稼働時間(走行時以外を含む)

1カメラか2カメラ(前後録画)か など

したがって、フォーマットのタイミングは取説に記載されている範囲内で自分で決めるしかないようです。

ドライブレコーダーにエラー通知機能があるなら、それを待ってフォーマットすればいいという考え方もあるかも知れませんが、もしものとき録画が正常にできていなかったら後悔しかありません。

素人なので詳しいことはわかりませんが、恐らくエラーが表示されるときはかなり状態が悪くなったとき(正常な録画ができなくなる可能性が極めて高いとき、もしくはすでに正常に録画できていないとき)かも知れません。

そうなる前に早めのフォーマットをしておいたほうが後悔しないと思います。

そもそもフォーマット自体むずかしいことではありません。この記事の最後に例として自分のドライブレコーダーのフォーマットのやり方を載せています。

録画ファイルの断片化の進行状況を知ることで、フォーマットのタイミングを決める何かしらのヒントになれば幸いです。

断片化の分析

フォーマットが必要な理由は、一言でいうと繰り返しの消去、書き込みにより録画ファイルが断片化しパフォーマンスが低下する(録画が正常にできなくなる)ことですが、フォーマットすることで断片化が解消されます(ただしデータは消えてしまいます)。

ここで一つ疑問になることがあります。パソコンのハードディスクのように任意のファイルの削除、追加なら断片化が発生するのは理解できますが、ドライブレコーダーの場合基本的には手動でファイルの削除は行わず、自動で古いファイルから順に書き換えが繰り返されるためデータが途切れることなく連続で記録され、途中の空き領域というものは発生しにくいと思うのですが、なぜ断片化が発生するのでしょうか?。

よく”上書き”ということを言いますが、microSDカードはこの ”上書きが出来ない” という特性があるようです。microSDカードに限らず、フラッシュメモリーを搭載しているその他のストレージ(SSD、USBメモリーなど)も同様です。

ハードディスクの場合は、古いデータの上から新しいデータを書き込むことが出来ますが、フラッシュメモリーを搭載しているストレージは新しいデータを書き込む場合、古いデータが削除されその場所に新しいデータが書き込まれるようになっているようです。ただし、ユーザーがこれを意識することはありません、自動でこのような動作をしています。

素人なので詳しくは省略しますが、興味のある方は ”フラッシュメモリー 上書き” などのキーワードでWeb検索してみて下さい。

フォーマットするにあたり、前回フォーマットしてから2週間たったからそろそろまたフォーマットするかといった感じではどの程度ファイルが断片化したのかわからず、フォーマットの必要性が実感としてわかないと思います。

そこでパソコンのデフラグツールを使用して実際の断片化状況を調べてみたいと思います(デフラグは行いません)。

使用したのは以下のデフラグツールです(いずれもフリー版を使用しています)。なお、Windowsツール内のデフラグツールでは分析できませんでした。

Defraggler(バージョン:2.22.995)

Smart Defrag (バージョン:9.3.0.341)

注)今回、これらのデフラグツールは断片化の分析のみに使用しています。デフラグツールとして推奨しているわけではありません。デフラグツールのダウンロードおよび使用は自己の責任において行ってください。また、microSDカードをデフラグするとカードの寿命を縮める事になるようですのでデフラグしないで下さい。

調査環境は以下の様になります。

調査環境

ドライブレコーダー:パイオニア VREC-DZ200

microSDカード:容量 32GB スピードクラス クラス10

録画ファイル仕様:解像度 1920×1080 フレームレート 27.5fps (音声の録音はOFF)

運転頻度 : 1日約1.5時間 週5日程度

自分が使用しているドライブレコーダーは パイオニア VREC-DZ200 前方録画タイプ(生産終了品)ですが、取説によると32GBのmicriSDカードに連続録画できる時間は最大で約5時間となっています(記憶域の割り当てを連続録画優先の設定にした場合)。したがって、これを超えると録画データが書き換えられます。

VREC-DZ200外観斜め上から
このドライブレコーダーを取り付けています

ドライブレコーダーの録画ファイル時間、microSDカードの記憶領域の割り当ては下の表の黄色い部分の設定にしています。

録画ファイル時間設定と記憶領域の割り当ての図

*残容量とは、①~③の設定の中で最もVideoファイルの容量を優先した設定で、具体的には”Event:20ファイル、Parking:10ファイル、Photo:400枚、残りの記憶域にVideo(連続録画)を保存する”という設定になります。

ドライブレコーダーで録画するとmicroSDカード内には4つのフォルダー(Event、Parking、Photo、Video)が作成されています。

Eventフォルダーには衝撃を感知したときなどに動画ファイルが保存され、Photoフォルダーには手動で静止画を撮ると画像ファイルが保存されるようになっています。

Parkingフォルダーには駐車監視録画ファイル、Videoフォルダーには連続録画ファイルが保存されています。

microSDカードをパソコンで開いた状態(フォルダー4つ、ファイル1つ)

”Video”ファイルを開くと以下の様になっています(ファイル数が多いので一部のみになります)。

Videoフォルダーの中身(MP4とNMEAファイルが並んだ状態)

連続録画ファイルは3分(約250MB)で一つのファイルになっており、連続録画ファイル(MP4ファイル)とGPS座標などの管理ファイル(NMEAファイル)が一対になっているようです。

フォーマットしたmicroSDカードで約1.5時間録画した後デフラグツールで分析した結果が以下の通りです。

1.5時間録画後のDefragglerの分析結果
Defraggler の結果
1.5時間録画後のSmart Defragの分析結果
Smart Defrag の結果

どちらの結果も ”断片の数=225、断片化したファイル=69” となっていますが断片率が異なるようです(このときの総ファイル数は78です)。

断片化率が異なるのは算出方法の違いのためだと思われます。この時点でのディスク使用容量は7.3GB/29.7GBなのでまだ書き換えまでには余裕があります。

フォーマット直後の書き込みでもすでに断片化しているようです。よく見ると録画ファイル時間3分のMP4ファイルはすべて断片数が”4”となっています。

これは書き換えの繰り返しによりは発生した断片ではなく、このように保存される仕様になっているものと思われます。

したがって、断片化の進行の調査においては ”1ファイル当たり断片数5以上” のファイルを対象とし、1ファイル当たり断片数4以下のファイルは除外しています。

実際のファイルの分析結果は以下の様になります。表示されているのはVideoフォルダー内の連続録画ファイルで、断片化していないファイルは表示されていません(ファイルの数が多いのでこれも一部のみになります)。ファイルサイズが252,200KB前後のファイルが録画時間3分のファイルです。

Videoフォルダー内の断片化されたファイルの詳細(Defragglerの結果より)
Videoフォルダー内のファイル

MP4ファイル断片数4、NMEAファイル断片数3の連続になっていることがわかります。上のスクリーンショットには表示されていませんが、3分に満たないMP4ファイルはファイルのサイズに応じて断片数が3、2、0のどれかになっており、それと対のNMEAファイルは断片数が2、0のどちらかになっています。

Parkingフォルダー内の駐車監視録画ファイル(MP4ファイル)の分析結果は以下の様になります。断片数は1ファイルにつき2となっています。

Parkingフォルダー内のNMEAファイルは断片化していないため(ファイルサイズが小さいためだと思われます)、デフラグツールによる分析結果には表示されていません。

Parkingフォルダー内の断片化されたファイルの詳細(Defragglerの結果より)
Parkingフォルダー内のファイル

次からは断片化の進行状況になります。

断片化の進行

実際の断片化の進行については Videoフォルダー内連続録画ファイル(MP4ファイル) を対象に調査していきます。

初期の断片化状況

フォーマットから約5時間半録画した後の断片化状況が以下になります。

まだ容量いっぱいまでは書き込まれていませんが、ほぼ初回書き込みが終わろうとしている状態です。数値はMP4ファイルとNMEAファイルの合計ですが、NMEAファイルはMP4ファイルに較べてファイルサイズが非常に小さいため区別していません。

初回書き込み時のVideoフォルダー内の記憶域の内訳

上の状態の MP4ファイル 1ファイル当たりの断片数とそのファイル数を表したものが次のグラフです(この状態が初期状態です)。

初回書き込み時の1ファイル当たりの断片数別ファイル数の棒グラフ

断片数が3以下のファイルは、車のエンジンをOFFにした際などに発生するサイズが設定している録画ファイル時間3分に満たないファイルです。

もし、すべてのファイルが3分ならば”断片数4”のファイルのみになります。

書き換え1回目後の断片化状況

フォーマットから約11時間半録画した後の分析結果が以下の様になります。

書き換え1回目が行われ、さらに493MB分書き換え2回目が行われています。

書き換え1回目のVideoフォルダー内の記憶域の内訳

断片化状況は以下の様になり、最初の書き込みで存在しなかった断片数5以上のファイルが発生しています。

これ以降は 断片数5以上のファイルのみ グラフに表示します。

1ファイル当たりの断片数別ファイル数の棒グラフ(書き換え1回目)

書き換え2回目後の断片化状況

フォーマットから約18時間録画した後の分析結果が以下の様になります。

書き換え2回目が行われ、さらに3.5GB分書き換え3回目が行われています。

書き換え2回目のVideoフォルダー内の記憶域の内訳

断片化状況は以下の様になり、断片数5以上のファイルが増えているのがわかります。

1ファイル当たりの断片数別ファイル数の棒グラフ(書き換え2回目)

”断片数11”のファイルを実際に再生してみましたが、特に映像に問題はありませんでした。再生の際はmicroSDカードをカードリーダーに挿しパソコンのUSB経由で閲覧しています(ファイルをパソコンに移動していません)。

専用ビューアーではなくWindowsのメディアプレーヤーを使用しています。

書き換え3回目後の断片化状況

フォーマットから約24時間録画した後の分析結果が以下の様になります。書き換え2回目のファイルが約90MB分残っていますが、ほぼ書き換え3回目が行われた状態です。

書き換え3回目のVideoフォルダー内の記憶域の内訳

断片化状況は以下の様になり、断片数5以上のファイルがさらに増え、最大断片数13のファイルが発生しているのがわかります。

1ファイル当たりの断片数別ファイル数の棒グラフ(書き換え3回目)

”断片数13”のファイルを再生してみましたが問題ありませんでした。

書き換え4回目後の断片化状況

フォーマットから約29時間半録画した後の分析結果が以下の様になります。書き換え4回目がほぼ100%を占めています。書き換え3回目のファイルはほとんど残っていません。

書き換え4回目のVideoフォルダー内の記憶域の内訳

断片化状況は以下の様になり、断片化が少しずつ進行しているようです。最大断片数14のファイルが発生しています。

1ファイル当たりの断片数別ファイル数の棒グラフ(書き換え4回目)

”断片数14”のファイルも問題なく再生できました。

書き換え5回目の断片化状況

この書き換え5回目が最後の分析になります。フォーマットから約35時間録画後になります。個人的にはここがフォーマットから約1か月(33日目)です。

書き換え4回目のファイルが約1GBほど残っていますが、書き換え5回目が行われた状態です。

書き換え5回目のVideoフォルダー内の記憶域の内訳

断片化状況は以下の様になり、やはり断片化は進んでいるようです。最大断片数18のファイルが発生しています。

1ファイル当たりの断片数別ファイル数の棒グラフ(書き換え5回目)

”断片数18”のファイルの再生も問題ありませんでした。

初期(フォーマット後最初の書き込み)から書き換え回数5回目までの、断片数5以上のファイル数の進行状況をまとめると以下の様になります。

断片数5以上のファイル数の進行状況

以上の結果から、徐々にですが確実に断片化は進行しているようです。ただし、今回の調査環境では断片化の進行により正常に録画できていないファイルは発生していないようです(書き込み回数毎に断片化の最も多いファイルを再生した結果であり、すべてのファイルを確認したわけではありません)。

自分の場合、これまで2週間に1回(月に2回)の頻度でフォーマットしていたので、このままの頻度で特に問題ないと思われます。

たとえ断片化が深刻でなくとも数ヶ月に1回にすると、前回いつフォーマットしたのかわからなくなる可能性が高くなるので最低でも月1回(月始めまたは月末など)にしたほうがいいのではないかと思います。

連続録画時間を20秒にしてみたら

ファイルサイズが小さい方が1ファイル当たりの断片数が少ないようなので、録画ファイル時間を最短の”20秒”にしてみたらどうなるのかについても調べてみました。

20秒にした場合もフォーマット直後の初回の書き込みで、すでに断片は発生していました。

1ファイル当たり”断片数2”となっています。

この設定で通常通り(1日当たり約1.5時間)運転をしていたら、8日目に”SDカードエラー”が発生し記録できなくなりました。

SDカードエラー画面

このときのmicroSDカードの書き換えの状況は、書き換え1回目がほぼ終わろうとしている状態でした。書き換え回数が1回目でもSDカードエラーが発生していることになります。

SDカードエラー発生後の”断片数3”以上のファイル数は以下の通りでした。

SDカードエラー発生後のmicroSDカードをDefragglerで調べた結果が以下です。

”断片化しているファイル=939、断片の総計=1,930、断片化の割合=85%”となっています。

このことから1ファイル当たりの断片数ではなく、トータルの断片数が多いとエラーになると思われます。

したがって、録画ファイルの時間が短いほどフォーマットのタイミングを早めないとエラーになる確率が高くなる可能性がありそうです。

注)今回の調査環境(使用したドライブレコーダーの機種及び設定、microSDカードの種類、運転時間、運転頻度など)が異なると場合によっては結果が大きく変わってくるかも知れませんので一つの参考としてください。

最後にフォーマットのやり方を記載しておきます。

フォーマットのやり方

フォーマットのやり方は簡単です。これを怠ったために肝心なときの映像が記録されていなかったとしたら悲しいです。

以下が自分の現在使用しているドライブレコーダーのフォーマットの手順です。

”メニューボタン”を押す

VREC-DZ200 フォーマット手順①

”▽ボタン”を押し”SDカードフォーマット”を選択しする

”✓ボタン”を押す

VREC-DZ200 フォーマット手順②

”すべてのデータが削除されます。よろしいですか?”と表示される

”✓ボタン”を押す

VREC-DZ200 フォーマット手順③

”フォーマット中”と表示される

VREC-DZ200 フォーマット手順④

フォーマットは数秒で終了

VREC-DZ200 フォーマット手順⑤

”戻るボタン(←)”を押し元の画面に戻る

以上でフォーマットと完了です。慣れれば10数秒程度で出来ます。

おわりに

自分自身、過去に何度か事故を経験しています。いずれもドライブレコーダー未搭載のときです。

一番最近の事故のときは、もっと早くドライブレコーダーを取り付けていればと強く後悔しました(どれにしようかと機種選びに時間をかけ過ぎていました)。

事故後の実況見分等で重要と思えるのは、走行していてどのタイミングで信号の色がどうだったとか、どのタイミングで異常に気が付いたとか、どのタイミングでブレーキを踏んだとかといった情報です。ほんの数秒間にこれらの情報を鮮明にかつ正確に記憶することは困難です。

ドライブレコーダーにはこれらの位置情報、走行速度など(GPSデータ)も保存されるので記憶よりも正確です。

そのデータをきちんと保存するためにも記憶媒体であるmicroSDカードの管理(定期的なフォーマットや交換)には気を付けてください。

この記事を書いている人
ひとっさん

日々の暮らしや趣味を楽しむ中で行ったことで、役立ちそうなことやヒントになりそうなことを記事にしています。
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